多田かおる『イタズラなkiss』

イタズラなkiss 第1巻 (フェアベルコミックス CLASSICO)

イタズラなkiss 第1巻 (フェアベルコミックス CLASSICO)

連載:別冊マーガレット(1990-1999)
単行本:集英社マーガレットコミックス(1990-1999) 全23巻


 『愛してナイト』の作者としても有名な多田かおるの代表作にして遺作。別冊マーガレットで9年間にわたって長期連載されたが、作者の急逝により未完のまま終了。連載期間中にCDドラマ版とドラマ版が制作され、後にアニメ化と舞台化、そして台湾&韓国でのドラマ化も実現するに至った。
 主人公は、物語開始時点で高校3年生の相原琴子。学園内の落ちこぼれクラスであるF組に所属する彼女が、入学以来ずっと憧れ続けていたAクラスの天才美青年・入江直樹に、ラブレターの受け取りを拒否される場面から物語は始まる。その後、諸々の経緯を経て、親同士の事情から二人は同居することになり、二人を中心とした恋愛劇が9年間にわたって描かれることになる。
 妄想&暴走癖のある琴子&冷淡な俺様主義の入江を筆頭として、登場人物の大半が非常に極端な性格&設定で、物語もぶっ飛んだ展開が多いので、読者によって好き嫌いは分かれる内容だと思うが、リアルタイムで9年間にわたって彼女達の人生を描き続けた点は高く評価すべきである。それだけに、琴子にとって「最後の一大イベント」の直前で終わってしまったのが残念。
 テニス描写に関しては、入江は高校生の頃からテニス部に助っ人として参加しているのだが、大学編においては琴子もテニス部に加わることになり、テニスが絡んだ展開も増え、時にはそれが物語中の重要な局面に影響を及ぼすことにも繋がる。それ故に、練習の場面においても、試合の場面においても、フォームやラケットの描写にはぬかりがなく、きっちり描かれている。
 実質的には琴子の恋物語は10巻で一段落ついており(その後も横槍は入るが)、以後は彼女の進路&就職を巡る物語とサブキャラ達の恋愛話の割合が増えるが、それはそれで悪くない。ただ、やっぱり大学2〜3年の頃の話が一番面白かったと私は思う。ちなみに、私の一番のお気に入りは、その時期に登場する後輩の中川武人。彼の自転車のエピソードは非常に好きです。