井沢陽子『シンデレラ・ロード』

シンデレラ・ロード 1 (講談社コミックスるんるん)

シンデレラ・ロード 1 (講談社コミックスるんるん)

連載:『るんるん』(1996〜1998年)
単行本:講談社るんるんKC(1997〜1998年) 全3巻


 かつて講談社から発行されていた『なかよし』の姉妹誌『るんるん』の末期において、同誌の休刊まで連載されていた作品(ただし、番外編のみ『なかよし』増刊号に掲載)作者の井沢陽子の他の代表作としては『バージンブルー』『ウェディング★キッス』などが挙げられる(共に『なかよし』)。
 主人公は、区立第三中学に通う2年生の三好いつき。常に遅刻ギリギリで学校へと駆け抜ける彼女は、いつもバス停で見かける他校の男子生徒のことが気になっていた。友達からの情報を通じて、彼が大会社の令息・三条寺玲(あきら)であることを知った彼女が、少しでも彼に近付くために、上流階級のマナーを学んで一流のレディーを目指すことになる、という物語。
 具体的にいつきを指導するのは、レディー養成学校である三条寺カレッジを経営する、玲の祖母。毎回のエピソードの最後では、必ずその回の課題に関してのいつきの習得度合に対する彼女の評価が記されている。なお、後半では、二代目の教育係として、小笠原環という若い女性が登場するのであるが、個人的には彼女が結構私の好みのツボだったりする。
 一方、玲は金持ちらしからぬ気さくな性格で、スポーツ、特にテニスに興じる活発な少年である。そして第3話においては、そんな彼といつきがペアを組んで混合ダブルスを戦う物語が描かれることになるのだが……、正直言って、この人はあまり動きのある絵面には向いてないんじゃないか、と思わせるレベルの描写でしかない。まぁ、セレブの象徴としてのテニス設定にすぎないので、それほど力を入れる必要も無いといえば無いのだが。
 作品全体としては、お転婆少女が淑女を目指すという古典的なモチーフの物語であり、良くも悪くも基本に忠実な少女漫画だと思う。絵的には、ほどよい髪ツヤと瞳キラキラのバランスが私好みなのだが、画面構成に関しては、やや読みにくさも感じた。これは、低学年誌故の独特の様式なのかな。