「SHE & SHE」(『ANGEL HEART』収録)

Angel heart (マーガレットコミックス)

Angel heart (マーガレットコミックス)

初出:『別冊マーガレット』(1994年)
単行本:集英社マーガレットコミックス『ANGEL HEART』(1995年) 


 近年は宙出版などで活躍しているレディコミ作家・アリスンが、「杏奈周子(あずな・しゅうこ)」名義時代に別冊マーガレットで描いた短編作品。単行本としては二冊目となる『ANGEL HEART』に収録されている。マーガレット時代の単行本としては、他に『DAWN PEOPLE』と『Fisherman Boy』がある(正確には、後者は「杏成周子」名義)。
 主人公は、超お嬢様女子高・清徳学園の三年生で、「生徒会長」兼「テニス部部長」の麻生未華。彼女は米国人とのハーフ&中性的な美貌故に、学園内の「レズ派」と呼ばれる女生徒達のスーパーアイドルなのだが、そんな彼女に敵意を燃やしているのが、「正統派」と呼ばれるノーマルな異性愛者達の女生徒達のリーダー・神奈川留美子(生徒会副会長&テニス部副部長)である。激しく対立する両派の間で、実は密かに留美子を想う未華の恋心を、シリアスとコメディを織り交ぜながらテンポ良く描いている。
 主要人物二人がテニス部の部長&副部長であり、物語の終盤では二人のテニスの試合も描かれることになるのだが、上記の通り、基本的には「アブノーマルな恋物語」を描くことに重点が置かれた作品なので、その描写はあくまでも「背景」の域を出ない。故に本作品における「テニス部&生徒会」という設定は、少女漫画における一種の古典的な「ゴージャス」の表現法としてのみ用いられていると解釈すべきであろう。
 少女漫画からレディコミに転向する人は、その際に大きく作風を転換させる人が多いが、この人の場合は本作品の頃から既にレディコミ調の画風だったので、ある意味でそれは必然的な転向であったと言えよう。その意味で、慣れない人には違和感のある絵柄かもしれないが、レズ系ラブコメとしては読みやすい内容に仕上がっており、私としてはそれなりに楽しめた。まぁ、最後のオチがちゃんとオチてると言えるのかどうか、ちょっと微妙ではあるけどね。