吉田戦車「お嬢様とテニス」(『戦え!軍人くん』第1巻収録)

戦え!軍人くん (スコラ漫画文庫シリーズ)

戦え!軍人くん (スコラ漫画文庫シリーズ)

初出:不明(コミックバーガー?)
単行本:SC DELUXE バーガー『戦え!軍人くん』第1巻(1989年)


 『伝染るんです。』や『ぷりぷり県』などの不条理漫画で有名な吉田戦車の初期の読切作品。単行本としては『戦え!軍人くん』の第1巻に収録。初出は不明だが、表題作と同じ『コミックバーガー』(現在の『コミックバーズ』の前身)ではないかと推測される。同時収録作品は他に「戦え井森美幸!」「はるかなり東京ドーム」「永遠のわかめ酒」「甘えんじゃねえよ」(なお、「甘えんじゃねえよ」にも一本だけテニス部を舞台にした四コマがある)。
 主人公は、青森出身で序二段の力士・玉山田。彼の親方の娘である浅倉柳子の命令で、なぜか彼女の友達と一緒にテニスをさせられることになる、という物語。わずか8頁の作品故に、これ以上の内容はネタバレになってしまうため、割愛。
 吉田戦車という人は、日本を代表するシュール漫画家の一人として知られてはいるが、この頃はまだ作風が固まっていなかったのか、この単行本に収録されている作品群は、それぞれに印象が随分違う。表題作や「甘えんじゃねえよ」は、比較的「分かりやすいギャグ漫画」だと思うのだが、「はるかなり東京ドーム」や「永遠のわかめ酒」などは、(少なくとも私にとっては)「どこで笑えば良いのか分からない漫画」であった。
 で、本作品はどうかというと、残念ながら私の中では後者に分類される。「相撲部屋の親方の娘がテニス部」というギャップ設定だけでも面白くなりそうな要素はあるのだが、いかんせん最後のオチがオチになっていないし(←そもそも、そういう読み方をすること自体が間違いなのかもしれないが)、何度読み替えしてみても楽しめる要素が見出せなかった。まぁ、こういった作品は読み手の感性に依存するところが大きいので、私が楽しめなくても、分かる人にはこの作品の魅力が分かるのだろう、多分。
 余談だが、私がこの単行本で一番好きなのは「戦え井森美幸!」である。ある意味、下ネタ以上に「ズルいネタ」なのだが、この手のしりあがり寿っぽい作品は結構好き。でもまぁ、これも本来なら四コマで描くべき内容かな、という気もする。