灘しげみ「コートの上は青い空」

連載:『少女コミック』(1969年)
単行本:未発売


 『コートの嵐』『燃えよ!スマッシュ』『逆転ラブスマッシュ』などの作者である灘しげみが、『少女コミック』(この当時は隔週刊)1969年3号に描いた短編作品。作者はこの短編の数ヶ月後から連載されたバレー漫画「勝利にアタック!」で、同誌の看板作家としての地位を確立する。
 主人公は、酒屋の娘でテニス部の有力選手である松本洋子。彼女は次の県大会に部長である篠原正浩との混合ダブルスに出場することを目指していたが、富豪の娘である関口君代もまた、そのダブルス枠を狙っていた。前評判では洋子が出場することが有力視されていたが、どうしてもダブルス選手として出場したい君代が、彼女を罠に陥れてその座を奪おうとする、という物語。
 一応、この時点で既に「少女コミックのエース」という煽り文句がついていた作者であるが、正直言ってラケットや動作の描き方などは、その後の彼女の数々のテニス漫画と比べるとまだ未成熟で、正直言って読み辛い。ただ、同年の『スマッシュをきめろ!』や『ラケットに約束』よりも先に描かれた作品であることを考えれば、これはこれで仕方のないレベルの描写とも言える。
 ちなみに、洋子の持つ大型ラケットには、小柄な彼女がそれを使いこなすための「仕掛け」がほどこされているのだが、これが当時のルールとしてアリだったのか否かは、私には分からない。ただ、漫画としては面白いギミックだと思うし、こういった形で「その競技でなければ演出出来ないドラマ」を短編作品でも組み込むあたりが、スポーツ漫画家としての灘しげみの魅力なのだと思う。
 なお、作品タイトルについては、正直、その意図がよく分からない。別に「青空」がテーマになっている訳でもなければ、空を強調する描写がある訳でもないのだが、まぁ、この頃の少女漫画のタイトルなんて、そんなものなのかもしれない。