山岸凉子『白い部屋のふたり』

連載:『りぼんコミック』(1971年)
単行本:集英社りぼんマスコットコミックス(1973)
    白泉社花とゆめコミックス(1976)
    角川書店あすかコミックススペシャル『レフトアンドライト』(1988年)


 『アラベスク』や『日出処の天子』などで有名な「花の24年組」の巨匠・山岸凉子の初期の短編作品。『りぼんコミック』に掲載された後、集英社から「山岸凉子作品集3」の表題作として単行本化された後、白泉社から『山岸凉子傑作集』の表題作として再販され、更に角川から『山岸凉子全集28 レフトアンドライト』の巻末に再収録された。近年の作者は『舞姫 テレプシコーラ』を『ダ・ヴィンチ』にて連載中。
 物語の舞台はフランスの女学校。主人公は、両親を亡くして寄宿舎に入ることになった良家出身の美少女レシーヌ・ド・ポアッソン。彼女と同室となった不良少女のシモーン・ダルクは、レシーヌに対して事あるごとに小馬鹿にするような態度を続け、それに対してレシーヌは反発を重ねていくが、やがてシモーンの家族関係を巡る意外な一面をレシーヌが目撃したことを契機として、二人の関係が急速に接近し、やがてそれは「友情」を飛び越えた一つの「愛」の形として結実することになる。
 『ふたりぽっち』と共に「黎明期の百合漫画」の代表作として有名な本作品であるが、基本的にボーイッシュ系のかおる視点中心で描かれていた『ふたりぽっち』とは対照的に、こちらは完全にフェミニンなレシーヌの視点のみから描かれており、その分、シモーンという存在がよりミステリアスかつ耽美的な存在として異彩を放っている。
 また、テニス描写に関しては、シモーンがテニスの腕を披露する場面が数頁描かれる程度で、この点に関しては『ふたりぽっち』のかおると同様、あくまで「王子様的存在」としての記号的な設定にすぎない。ちなみに、作中でかおるは『ウェストサイド物語』のトニーを、シモーンは(その元ネタである)『ロメオとジュリエット』のロメオを演じる場面があるなど、(性格も外見も全く異なるキャラなのだが)両者の共通点は多い。
 そして本作品もまた、終盤で衝撃的な展開が待ち受けているのであるが、本作品の方が序盤からそれを臭わす伏線が張られており、物語全体の構成としてはよりスマートな印象である。それにしても、昔はこんなハードな作品がりぼん系雑誌に掲載されていたと考えると、時代は変わったものだとつくづく思い知らされる。