神保史郎(原作)/吉森みきを(漫画)「炎のサーブ」

初出:『りぼん』(1970年)
単行本:不明


 『青春はラブ・40』の原作者でもある故・神保史郎と、『ミュンヘンへの道』や『魔法のマコちゃん』のコミック版の作者でもある吉森みきをによって、『りぼん』1970年4〜6号に描かれた作品(おそらく単行本化はされていない)。作者は戦時中の日本国民の物語を数多く描いたことでも知られており、『ほたるの墓』の漫画版も(アニメ映画版よりも20年以上前に)担当している。
 主人公は、村丘学園中学テニス部の響由紀。彼女自身はまだ球拾いばかりの日々だが、姉の美弥子は過去2年続けて代表選手に選ばれている実力者であり、そんな彼女のことを由紀も誇りに思っていた。そして美弥子は、毎年県大会の決勝で敗れている七中の岩本鋭子に勝つために、密かに新型サーブを開発していたのだが、その過程で右肩に違和感を感じるようになってしまう。そして、学校代表を巡るライバル・若村ヒロミとの試合の最中に、遂にその右肩が限界に達することになる……、という物語、
 物語の軸を構成しているのは上記の四名(響姉妹、若村、岩本)であり、序盤では主人公も含めた全員が、基本的に「自分のことしか考えない面々」として描かれている(姉の異変を知った後の主人公のリアクションなど)。それが、物語が進むにつれて少しずつ他者を気遣う様子を見せるようになる過程が見所の一つなのだが(さすがに岩本だけは立場上、最後まであまり変わらなかったが)、最終回の内容が少々詰め込み過ぎなため、その変化がやや唐突なように感じる。
 テニス描写としては、同時代の他作品と比べれば上手く描けている方だと思う。最後の魔球の種明かしは、今読むとさすがに強引すぎる感は否めないが、そこは「1970年の作品」ということを考慮した上で楽しむべきであろう。
 僅か3話という連載期間に関しては、当初から短期連載の予定だったのか、打ち切りだったのかは断言出来ないが、最終回の展開のあまりの唐突さから察するに、やはり打ち切りだったのではないか、と私は思う。というか、せめてもう1話あれば、もっと綺麗にまとまっただろうに、と思うと、非常に残念な作品でもある。