漫画家への対価を支払わずに漫画を読む行為

 色々考えているうちに出遅れてしまいましたが、漫画レビューに関わる人間として、ちょっと私もこの問題について語ってみようかと。
 漫画家が生業として成立するためには、雑誌や単行本が売れることで原稿料や印税を手にする必要がある訳ですが、実際には漫画家にお金が還元されない形で漫画を読む方法が、世の中には様々な形で存在している訳です。それをちょっとまとめてみました。


1、友人から借りるor買うor貰う
2、捨てられている本を拾う
3、古本屋やオークションなどで買う
4、漫画喫茶(or床屋、病院など)で読む
5、本屋やコンビニで立ち読みする
6、web上に不正に載せられた画像を拾う
7、万引きする


 法的に考えるならば、6と7は明らかに違法で、5がグレーゾーン、そして3と4は「現状では合法だが、一部の漫画家団体からは法改正を要求されている問題」ということになるでしょう。1と2に関しては、そもそも法的な規制は不可能ですわな。
 ただ、違法だろう合法だろうが、これらの行為は全て、本質的には「漫画家への対価を支払わずに漫画を読む行為」であり、漫画界の発展に対して一切寄与しない行為であることは自覚すべきであると思います。私自身は6や7には手を出してませんが、3〜5の行為を頻繁に繰り返している身ではあるので、6や7の常習犯を道義的な意味で非難出来る立場には無いと自覚しています。
 とはいえ、商業的に考えて、3〜5の存在が消えた方が良いのか考えると、そうでもないと思うんですよね。私の場合も、雑誌を立ち読みした上で「面白い」「応援したい」「打ち切られないでほしい」と思った漫画は単行本を買いますし、漫画喫茶で読んで気に入った単行本を改めて買うこともあります。逆に言えば、それらの機会が無ければ、私はその漫画を買うことは無かったでしょう(多分、そのお金は他のことに使っていると思う)。
 また、あまりに既刊数が多い漫画の場合、既刊本は古本でまとめて買って、その後から出た単行本は新刊で買う、ということも多いです。実際、私にとってはテニプリしゃにGOがそうでしたし、たとえば今の小学生がワンピやナルトの単行本を買い揃えようと思った時に、「まず古本屋で既刊本を揃える」という行為を禁じられたら、新刊本を買う意欲も失せると思います。
 つまり、3〜5の行為が黙認されているのは「その時点で対価が支払われなくても、その後で印税として還元してくれる者もいる」という思惑があるからでしょう。無論、実際には3〜5の行為だけで止まってしまう人も多いでしょうが、上記のような形で「新刊本の読者の新規開拓」にも繋がるということは、出版社も分かっているのだと思われます。
 その一つの証明として、実は上記の七パターンとは別にもう一つ、完全合法で道義的にも問題のない形で、「漫画に対価を支払わずに漫画を読む方法」が存在するんですよね。それが、


0、公式にWEBに掲載されている漫画を読む


という行為だと思うのです。無論、まだ現時点では、極限られた一部の漫画しか存在しませんが、昨今の無料WEBマガジンというジャンルの確立は「雑誌立ち読み→単行本購入」のパターンの読者の存在を見越した上での戦略なのでしょう。
 そしてこのWEBマガジンという媒体は、立ち読みとは違って「商品を汚さずに読める」だけでなく、「場所を取らない」というメリットもあります。実際のところ、私が漫画雑誌を殆ど買わない理由の一つに「捨てられない病」と「住宅事情」のジレンマという問題があるので、その意味でも今後のWEBマガジンの発展には期待したいですね。
 無論、そのためには「一度無料で読んだ漫画でも、面白ければ単行本を買って手元に残しておきたい」と思う読者と、読者にそう思わせるだけの漫画家が必要な訳で、その意味では今後の(著作権問題を含めた)漫画界の方向性は、我々読者を含めた漫画界に関わる人々全体の動向によって大きく左右されていくことになるでしょう。


参考URL
だからこそ僕は立ち読みをやめたくない - 無駄話
クラブサンデーに見るweb雑誌の可能性 - 無駄話