青山達也(原作)/内村月子(漫画)「テニスコートでラブタッチ」

連載:『別冊少女フレンド』(1974年)
単行本:未発売


 現在はレディースコミックやハーレクイン作品などで活躍する内村月子の初期の短編作品(原作者の青山達也については、詳細は不明)。『別冊少女フレンド』1974年2月号に掲載された。おそらく単行本化はされていないと思われる。ちなみに、現時点での作者の最新の単行本は『ライラックが薫るとき』(原作:ジョーン・ホール)。
 物語の舞台は不明だが、人物名から察するに、おそらく英語圏の国の学校だと思われる。主人公は、女子テニス部のエースで、学園の女王的存在であるスカーレット。美人だが男まさりな彼女が、男子テニス部の選手を全員倒して、彼等のコートの半分の使用権を奪い取るところから物語は始まる。その状況に同情したサッカー部のエース・アルが、スカーレットに対して男子テニス部にコートを返すことを条件に、(彼自身はテニス素人であるにも関わらず)スカーレットにテニスの試合を申し込む、という物語。
 優雅な金髪ヒロインとハンサムなサッカー少年というベタな組み合せの話であるが、正直言って、話は微妙。打ち込まれた(舞台設定からして、おそらくは硬式の)テニスボールをオーバーヘッドキックで蹴り返すなど、物語的にはかなり無理がある上に、最後のオチも「なんだかなぁ」な内容である。タイトルとストーリーもあまり合っていないし、色々な意味で迷走している印象が残る。
 ただ、絵は上手い。最初の8頁は2色カラーなのだが、この時代ならではのキラキラ描写も、スポーツ漫画としての動的な動きも、きっちり描かれている。一方で、物語がまさに佳境に入った終盤で、突然「月子の絵日記○月○日より」と題して、「作者が実際にテニスに挑戦して散々な結果に終わった話」が一コマ挿入されるなど、「漫画の構成として、それはどうなのよ?」と言いたくなる部分もある。
 なんだか酷評気味になってしまったが、上述の通り絵的には綺麗なので、海外の美男美女の優雅なひとときをニヤニヤしながら眺める漫画だと割り切れば、それはそれで楽しめる内容ではある。とはいえ、時代性を考慮する必要はあるものの、やっぱり普遍的にお薦め出来る内容とは言えないかな。