渡辺はるな「WINNER!」
初出:『ザ・マーガレット』(2002年)
単行本:未発売
現在は竹書房などで活躍するななせじゅんが、「渡辺はるな」を名乗っていた時代の『ザ・マーガレット』2002年4月号にて描いた短編作品。おそらく、本作品も含めて「渡辺はるな」時代の作品は単行本化されていない。作者の最新の単行本は『恋人たちのミダラな夜』(ダイトコミックス)。なお、イラストレーターの渡邊春菜とは(多分)別人。
主人公は、高校の女子テニス部の二年生エース・蓮見桜。彼女には双子の弟・楓がいるが、ガサツな桜に対して楓は軟弱なタイプで「性格、逆ならよかったのに」などと言われる日々を送っている。そして、楓もまた男子テニス部に所属しているのだが、その男子テニス部の部長・加賀駿哉(としや)が楓をパシらせているのに対してブチ切れた桜が、駿哉に喧嘩を売るところから物語は始まる。
駿哉は「気の強い女が好き」と自称しており、一年前からずっと桜のことを追っかけ回しているのだが、桜には彼の態度が軽薄に映ってしまい、その言葉を信じることが出来ない。そんな二人の間に、姉に対して強いコンプレックスを抱く楓が絡むことによって、彼等の関係がより混乱していくことになる。
テニス描写に関しては、コマ数は少ないが、動作自体は上手く描けていると思う。とはいえ、あくまで本編のメインは桜と駿哉の恋愛模様であり、テニスはそのための一つの舞台装置にすぎない。物語の性質上、男子部と女子部が併存する部活である必然性があったので、おそらくはそのための設定であろう。
物語自体は、50頁という枠の中に色々な要素を詰め込もうとしたせいか、やや散漫な印象はあるものの、それぞれのエピソードの盛り上げ方などは悪くない。ただ、出来れば全3回くらいの短期連載で描いた方がより映える題材なのではないかな、とも思う。
それにしても、本作品の最後の駿哉の選択に対して「さすがにそれはどうなのよ?」と思ってしまうのは、私が男性読者だからなのだろうか? あるいは、本作品を無理矢理「スポーツ漫画」として読もうとしたことの弊害なのだろうか? 少女漫画的には、このラストは十分にアリなのだろうけどね。