小石川景「サマー恋(ラブ)キャンプ」

初出:『ザ・マーガレット』(2006年)
単行本:未発売


 主にマーガレット系列の雑誌で活躍する小石川景の短編作品。『ザ・マーガレット』2006年8月号に掲載された。作者の単行本は今のところ『幻のブルーハワイ』が発売されているのみだが、その後もミュージシャン関口由紀とのコラボ漫画などを発表している。なお、同人時代は「いかよりこ」の名で活動していたらしい。
 主人公は、神奈川のM女高校に通う女子テニス部員・石井わかな。サーブすらまともに打てない程度の実力ながらも、テニスへの情熱だけは誰にも負けない彼女が、夏合宿で河中湖に来た時に、N大学のテニスサークルの佐伯慎(フルネームか否かは不明)に、その腕前を笑われるところから物語は始まる。その後、佐伯はわかなにアドバイスを試みるが、初対面の印象が最悪だったわかなはそれを素直に受け入れる気にはなれずに反発するものの、合宿中の一つの出来事が契機となって、二人の仲は急接近していくことになる。
 物語の主軸はわかなと佐伯の恋愛劇であるが、物語設定的にテニスがかなり重要な役割を担っており、初歩的な技術論なども作中に組み込まれているので、少女漫画誌における「テニスを扱った短編作品」としては、それなりに評価に値する内容だと思う。また、「大学のテニスサークルなんて、テニスしない人が集まっちゃったりして、冬はスノボサークルになるもんなの」というわかなの偏見も、ある意味でリアルで面白い。
 ただ、絵的には(特にシリアスモードの時の)佐伯に関してだけは、テニスのフォームも含めてカッコよく描かれているのだが、どうにも他のキャラの動作の描写などがやや手抜きなのではないかな? と思えてしまうほどにギャップがある。まぁ、それが佐伯の魅力を引き出すという意味での演出なのだとしたら、それはそれで少女漫画としてはアリなのかもしれないが。
 物語のラストについては、安易な御都合主義的ハッピーエンドという形にはせずに、その後の展開をボカしたままで終わらせている点が、個人的には好印象。短編作品としていは、ひと夏の出会いから、その後の展開を少しだけ期待させるくらいの描写で終わらせるのが、一番自然にまとまる流れだと思うしね。