こーさか里砂「セブンティ〜ン0(ラブ)」

初出:『ザ・マーガレット』(2006年)
単行本:未発売


 『ザ・マーガレット』2006年11月号に掲載された、こーさか里砂の読切作品。作者は本作品の他に「賭ける恋」「手のひらには君の木の葉」など、何本かの読切を同誌に掲載しているが、まだ現時点では個人名義の単行本は発売されていない。
 主人公は女子高生の皇雫(すめらぎ・しずく)。彼女が片想いしていたテニス部の御池(みいけ/名不明)が、クラス一の美女からの告白に対して「テニスしか考えられない」と言ってフる場面を目撃するところから物語は始まる。御池がテニス以外に興味を持てないことを知った彼女は、彼への恋を諦めて、彼と共に夢を追いかけるためにテニス部へと入部し、一年後には御池のダブルス相手に選ばれるほどの選手に成長するが、その間に御池は別の女性との交際を始めてしまう。そして、御池が彼女と接する姿を目の当たりにする旅に、雫は自分の中にまだ彼への未練が残っていることを思い知らされることになる。
 絵的には、シリアス絵とコメディ絵を織り交ぜるタイプの作風なのだが、正直言って同誌に掲載されている他の作品と比べても上手い部類とは言えず、またテニス描写に関しても、あまりきっちり描けているとは言い難い。絵柄自体は嫌いじゃないだけに、フォームの角度などに無理がある点がどうしても目立ってしまうのが残念に思えてしまう。
 だが、個人的には話は結構好き。入部動機自体は御池の存在ではあるものの、あくまでも真剣にテニスに打ち込もうとする雫の姿は、スポーツ少女漫画の愛好家の目には非常に好印象に映る。また、そんな雫とは対照的な「恋に生きる女」としての御池の彼女や「恋を語る女」としての雫の友人の言動も、彼女とのコントラストとして見ると面白い。
 ちなみに、(微妙にネタバレになってしまうが)作者は「高校テニスに混合ダブルスは存在しない」ということを分かった上で「あくまで一つの特別企画」として作中の試合を位置づけており、また主人公達の高校の名前が登場していないにも関わらず、対戦相手の高校の名前を某有名テニス漫画から拝借している辺り、それなりにテニスのことを分かった上で描いていると思われる。そういう意味でも、個人的にはちょっと贔屓目に見てあげたい作品かな。