猪熊しのぶ『SALAD DAYS』

サラダデイズ (16) (少年サンデーコミックス)

サラダデイズ (16) (少年サンデーコミックス)

連載:『週刊少年サンデー超』『週刊少年サンデー』(1997〜2001年)
単行本:小学館少年サンデーコミックス(1998〜2002年) 全18巻


 『都立水商!』などで有名な猪熊しのぶ出世作にして代表作。当初は『週刊少年サンデー超』にて連載され、その後、『週刊少年サンデー』へと移籍した。単行本は全18巻だが、現在の作者は『ビッグコミックスペリオール』にて『ダクションマン』、『アフタヌーン』にて『雪月記』を連載中。
 主に高校生を題材とした、いわゆる『BOYS BE...』形式の恋愛オムニバス作品であり、ある程度の共通舞台は存在するものの、登場人物は毎回異なる(そのせいか、単行本での掲載順は連載時とは一致しない)。ただ、必ずしも一話完結とは限らず、前後編や前中後編の形式の話も多い。また、人気のあるキャラ達のエピソードは何度も続編が描かれているので、その意味では『second season』と『L-COOP』の中間的な作風とも言える。
 そんな「連作シリーズ」の代表格である神山由喜&河村双葉の一連の物語において、インターハイ4位のテニス部員が登場したり、軟庭部の全国大会出場が報じられるなど、テニス関連の話題は何度か登場するのであるが、それらの中でも特にテニスに重点を置いたエピソードとして、彼等が通う桐花高校を舞台とした第16巻収録の『愛しき裏切り』を挙げることが出来る。
 この物語では、一年生にしてインターハイ準優勝を達成した桐花高校の織田切有(おだぎり・ゆう)と、河川敷で壁打ちしていた彼の前に現れた謎の少女・樋口愛理との愛憎劇が描かれる。ネタバレを避けるために詳細は割愛するが、正直、短編で描くには厳しい内容というか、出来ればもう少し頁数をかけて二人の関係を描いて欲しかった。ただ、恋愛漫画にしてはテニスの動作も丁寧に描かれており、その点は好感が持てる。
 作品全体を通して見ると、『BOYS BE...』に比べて悲恋率が高く、その意味ではより「恋のせつなさ」に重点を置いた作風と言える。どっちが好きかは人それぞれ。私的には、絵柄はこの人の方が好きなんだけどね。