土塚理弘・五十嵐あぐり『BAMBOO BLADE』

BAMBOO BLADE 8 (ヤングガンガンコミックス)

BAMBOO BLADE 8 (ヤングガンガンコミックス)

連載:『ヤングガンガン』(2004〜2010年)
単行本:スクエアエニックスヤングガンガンCOMICS(2005〜2010年) 全14巻


 『清村くんと杉小路くんと』や『マテリアル・パズル』などで有名な土塚理弘が、『金科玉条!? お花守』の作者である五十嵐あぐり(=曾我あきお)と組んで『ヤングガンガン』にて描いた作品。現在はスピンオフ作品である『BAMBOO BLADE B』が『月刊少年ガンガン』で連載中。
 主人公は、私立室江高校の剣道部の顧問・石田虎侍(とらじ/通所;コジロー)。同校の剣道部は部員数も少なく、まともに指導もしていなかったコジローだが、高校時代の剣道部の先輩が顧問を務める町戸高校と練習試合をすることになり、慌てて新入部員を集め始める。そんな彼の前に、剣道の川添道場の一人娘・川添珠姫(タマキ)が現れるところから物語は始まる。
 高校時代の情熱を忘れ、無気力な大人となってしまったコジローと、特に目標もなく「家のお手伝い」感覚で剣道を続けていた(しかし、実力は一級品の)タマキが、少しずつ「新たな自分」を探し出していく過程が物語の本筋であり、その周囲を個性豊かなサブキャラ達が、時にコミカルに、時にシリアスに盛り上げていく。そのテンポとバランスの良さは絶妙であり、特に物語終盤は鬼気迫る勢いで読者を作品世界へと引きずり込んでいく。
 そんな物語の片隅で、8巻に収録された番外編では、意外な形で「テニス」が絡んだエピソードが描かれる。一発ネタなので、その内容を解説することは出来ないのだが、ある意味で、この作品の独自性を引き立たせる上で最も効果的な題材として「テニス」という競技が選ばれたのであろう。
 最後は「コジローとタマキの物語」としては綺麗に終わっているのだが、その過程で登場したサブキャラ達が彼等と同等以上に魅力的すぎて、もっと彼女達の物語を読みたい(ここで終わらせるのは勿体ない)、と思ってしまうのもまた事実。一応、作者としては『BAMBOO BLADE C』の構想もあるらしいので、いつかまた何らかの形で彼女達と出会えることを期待したい。