三上龍哉『極道一直線』

極道一直線 1 (ビッグコミックス)

極道一直線 1 (ビッグコミックス)

連載:『ビッグコミックスピリッツ』(2003〜2006年)
単行本:小学館ビッグコミックス(2004〜2006年) 全5巻


 『鬼龍院冴子探偵事務所』などで有名な三上龍哉が、同作品の前に『ビッグコミックスピリッツ』で連載していたギャグ漫画。作者の他の代表作としては『くらしの手帳』『未来警察暴力課』『それ行け! 三蔵法師』など。
 主人公は、暴力団・関東鬼島会の組長・鬼島(スキンヘッドの中年男)。毎回、彼が突拍子もないトラブルに見舞われ(あるいは、彼自身の手でトラブルが引き起こされ)、黒田、サブ、田中などの組員達がそれに巻き込まれて右往左往する、というのが基本的な流れ。それぞれの事件には、漫画・特撮・スポーツ・時事ネタなど、様々なパロディが組み込まれている。
 本編においてテニス・ネタが登場するには二回。一回目は、第3巻収録の第43&44話「テニスの王子様」であり、ここでは鬼島の高校時代のライバル(にはとても見えない若い美形青年)が現れ、鬼島に「リアル・テニス」という特殊競技で勝負を挑む、という物語。本編では「これこそがテニスの原型」という位置づけだが、その学説は『燃えるV』内の四コマにおけるテニス起源説をも凌ぐほどにヒドい(彼はその後、もう一度だけ再登場する)。
 二回目は第5巻収録の第72&73話「スマッシュをねらえ!」。上記の話が元ネタとは全く無関係の話であったのに対し、こちらは元ネタのキャラ設定や台詞をほぼそのまま直接的にパロった内容であり、いかついオッサン達と少女漫画的キラキラ世界とのギャップが楽しめる(なお、第44話の最後でもこの作品に基づくパロキャラが登場するが、彼女等はこちらの話とは直接関係しない)。
 劇画調で描かれた男臭い面々が淡々と真顔でギャグを繰り広げる展開は、どこか野中ワールドを彷彿とさせる。個人的には、下ネタが多いのが玉に傷だと思うのだが、全体的なテンポの良さと絶妙な台詞回しのセンスは、その分の減点を補っても余りあるほどに秀逸である。『銀魂』や『ミツルギ』のノリが好きな人なら、おそらく楽しめるのではなかろうか。