永井豪『デビルマンレディー』

連載:『モーニング』(1997〜2000年)
単行本:講談社モーニングKC 全17巻(1997〜2000年)
    講談社漫画文庫 全9巻(2000年)


 言わずと知れた日本漫画界の奇才・永井豪が、自身の代表作『デビルマン』の外伝として『モーニング』で描いた作品。単行本は全17巻、文庫版は全9巻(終盤に加筆有り)。近年の作者は『デビルマン』執筆時代のエピソードを描いた自伝的作品『激マン!』を『漫画ゴラク』に連載中。
 主人公は、元水泳選手で現在は高校のテニス部顧問である美人教師・不動ジュン。物語は、彼女が高原のテニス部合宿に向かうところから始まる。突如現れた魔物達によって生徒達が襲われる場面に遭遇した彼女は、自らの中に眠る獣の本能を受け入れ、新たな生命体・デビルマンレディーへと変化していく(なお、テニス部設定は序盤以外では殆ど意味を成さない)。
 第一話から、いきなり魔物達による強姦&惨殺シーンが繰り広げられるなど、絵的にも非常に刺激的な内容であるが、物語本編もそれ以上に過激で、人間の本能や欲望をテーマとしつつ、国家・社会問題、更には生物学的視点をも組み込んだ上での広大な神話的世界観が展開されており、おそらくは旧作の時に描ききれなかったテーマを描こうとする作者の意図が感じられる。
 ちなみに、物語の序盤では、『デビルマン』という漫画&アニメがこの世界の過去に存在していたことが明示されており、直接的にはデビルマン本編(以下、「旧作」と表記)の世界とは繋がっていないかのように描かれていたが、中盤からは意外な形で旧作との接点が明らかになり、何人か旧作(および旧作の原形である『魔王ダンテ』)のキャラも登場することになる。
 正直、微妙に説明不足というか、どこか釈然としないままの設定もあったことは事実だが、それでも終盤の怒濤の勢いで真実が明らかになっていく展開の盛り上がり方は、旧作にもひけを取らない。旧作および本作を踏まえた上で『激マン!』を読むと、旧作の頃の様々な苦悩の末に、その25年後に本作を生み出すに至った経緯が妄想出来て、それはそれで非常に興味深い。