鈴木みそ『エガリテ』

連載:『テニスマガジン』(2004〜2008年)
単行本:未発売(webコミックパブーにて販売中)


 『銭』や『オールナイトライブ』で有名なライター出身の漫画家・鈴木みそが『テニスマガジン』にて4年間(2004年7月号〜2008年5月号)にわたって描いた、毎回オールカラー2頁の連載漫画(なお、タイトルは「デュース」のフランス語版)。単行本は未発売だが、電子書籍としてパブーで購入可能。現在の作者は『コミックビーム』にて『限界集落温泉』を連載中。
 主人公は、テニス好きの中年男性としての作者自身。休日にテニスを楽しむ一愛好家としての彼が、実際のプレイや取材などを通じて体験した出来事、素朴な疑問、あるあるネタなどを描きつつ、更にはそこから発展した妄想ネタや、時事ネタ・パロディネタなどを織り交ぜながら、様々な角度からテニスという競技の魅力を、面白おかしく伝えていく。
 テニス専門誌掲載の作品だけあって、内容はかなりマニアックであり、テニスを知らない人が読んでも何が面白いのかは分からないと思うが、好きな人ならニヤリとさせられる、そんな絶妙なネタが満載である。稀に、テニスとは殆ど関係のない話が挿入されたりもするが、それはそれでまた面白い。
 個人的には、妄想ネタ関連の話が一番好き。特に、「タタミサーフェス構想」や「テニスと洗剤の関係」を取り扱った話などは、最後のオチまで含めて「分かる人だけ分かればいいギャグ」としてのクォリティが絶品である。他にも、電子書籍版の表紙にもなっている似顔絵ネタや、脳トレ井上マーなど、その時々の流行モノを扱ったパロディのセンスなどもすばらしい。
 ちなみに、本作品の連載当時はまさにフェデラーの絶頂期であり、様々なネタによく彼が登場する(あと、シャラポワも)。一方、日本人選手に関しては、最終盤になってようやく錦織の活躍や伊達の復活が語られる程度で、日本テニス界が最も盛り上がってなかった時期の作品だったことが伺える。だからこそ、そんな時代を一人で支えたこの人を表紙に選んだんだろうな。