二ノ宮知子『天才ファミリー・カンパニー』

連載:『きみとぼく』(1994〜2001年)
単行本:ソニー・マガジンズコミックス(1995〜2001年) 全11巻
    幻冬社バーズコミックススペシャル(2003年) 全6巻
    幻冬社コミックス漫画文庫(2008年) 全6巻


 『のだめカンタービレ』で有名な二ノ宮和子の初期の代表作。『きみとぼく』で7年にわたって連載され、1998年にはCDドラマ化、1999年にはテレビドラマ化を果たした(ドラマ版のタイトルは『あぶない放課後』。後に『のだめ』に出演する玉木宏水川あさみも出演していた)。
 主人公は、天才的な頭脳と経営センスの持ち主である高校二年生・夏木勝幸。製菓会社に勤める母・良子の仕事を手伝いつつ、ハーバードでMBAを取得することを目指していた彼の前に、母が再婚相手として流浪の小説家・田中荘介と、その息子・春を連れてくるところから物語は始まる。
 序盤は、あまりに胡散臭い風貌と常識外れの性格の持ち主である田中親子と彼等の友人達によって、勝幸の生活が乱されていくドタバタ劇が中心であり、後の『のだめ』にも通じる「堅物で俺様気質の天才」と「空気を読まない変人(であるが故の天才?)」によるテンポの良い掛け合い漫才が楽しめる。
 一方、中盤以降は勝幸達を襲う様々な経済(+α)危機に対して、勝幸が彼等の力を借りながら必死に戦い、乗り越えていく物語が描かれる。バブル崩壊後の不況の中で、グローバル化やインターネット普及が進む激動の時代(1995年)における企業間の陰謀劇は、今読んでも非常に面白い。展開自体は極めて御都合主義的ではあるのだが、序盤から張り巡らされた様々な伏線が絶妙なタイミングで明かされていく語り口は、見事としか言い様がない。
 ちなみに、ヒロインである同級生の永沢京子がテニス部、というのがココで取り上げた理由なのだが、残念ながら彼女の正体は「隠れ美術部員」で、テニス部はカムフラージュ設定でしかない。一応、物語の最後の最後で、他にも意外な重要人物が実はテニス経験者であったことが発覚するのだが、多分、その設定がなくても物語は成立する。でもまぁ、そのテニス設定のお陰で私はこの名作に触れることが出来たので、その意味では感謝したいな。