河方かおる『GOOD KISS! version 2.0』

GOOD KISS!version 2.0 (3) (少年マガジンコミックス)

GOOD KISS!version 2.0 (3) (少年マガジンコミックス)

連載:『少年マガジンスペシャル』(1997〜1999年)
単行本:講談社マガジンKC 全6巻(1998〜1999年)


 河方かおるの初期の代表作『もっとGOODキッス』の続編。コンセプトは前作と変わらず、読者の体験した恋愛談を再構成した作品であるが、今回は必ずしも「キス」で終わるとは限らない、より多様な物語構成となっている。現在の作者は同誌にて『マリア×マリア』を連載中。
 第二期に相当する本シリーズには、合計25のエピソードが収録されているが、その中で第3巻収録の第9話「ふられ気分でフォーリン・ラブ」において、高校二年生のテニス部員・神崎雄一の恋物語が描かれる。
 彼は終業式の日に、部活の先輩・中井美砂子に告白してフラれてしまうのだが、その直後に、友人がナンパした女の子集団の中にいた、彼女と同じ姓を持つ少女・中井亜砂子と出会うことになる。彼女とはいい関係になりながらも、まだ先輩のことを忘れられない彼は微妙な心境に陥っていたが、そんな中で、彼と先輩と亜砂子の意外な関係を知らされることになる。
 テニス描写に関しては、上記のエピソードの中で神崎と亜砂子がテニスに興じる場面があり、短いながらも丁寧に描かれている。また、2年前の伊達公子の引退についても本編で触れているが、まさかこの時点では、彼女が10年後に復帰することになるとは、夢にも思わなかっただろう。
 前作は長期連載だったこともあり、連載途中で微妙に絵柄の変遷が見られたが、本作品ではそれが安定してきたようで、その後の『OPEN SESAME』『マリア×マリア』へと続く作風が確立したと言える。個人的には最初期の絵が一番好きなのだが、この頃から現在へと続く絵柄も悪くない。
 ちなみに、個人的な(前作も含めた上での)ベストエピソードは、第2巻収録の第8話「ONE AND ONLY」。基本的に主人公の相手役が分かりやすい本シリーズにおいて、「今の彼女」と「昔好きだった級友」との間で静かに揺れる主人公の心情描写が、非常に印象的だった。