松乃美佳「いつもそこに君が」(『愛MYメープル』収録)
- 作者: 松乃美佳
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/06
- メディア: コミック
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単行本;集英社りぼんマスコットコミックス『愛MYメープル』(2001年)
2000年代初頭の『りぼん』系雑誌で活躍した松乃美佳の初期の読切作品。単行本としては『愛MYメープル』に収録された(同時収録は表題作の他に「手のひらの宝石」「春らんらん♪」「熱、愛宣言」)。作者の代表作としては『恋するピアノ』『なでしこハニー』などが挙げられる。
主人公は、集英高校2年でテニス部員の伏見あやな。中学時代に彼女をテニス部に誘った少年・南貴行への一途な想いを抱きつつ、彼との再会を夢見てテニスを続けてきた彼女であるが、高校の中では男子テニス部員である本田直(なお)と親しく、周囲の人々の目には、二人が付き合っている関係であるかのように映っている。そんな二人の前に、直に想いを寄せる少女が現れたことで、少しずつ二人の関係が変化していく様子が描かれる。
本作品において、南は最後まで顔が明確に描かれないという、一風変わった演出で描かれており、その点が個人的には面白いと感じた。ある意味、この演出が一種のネタバレではあるし、そのことをココで書いてしまっていいのかも微妙ではあるのだが、仮にその情報がなかったとしても、最初の数頁を読んだだけで先の展開が予想出来るくらいには(いい意味で)「分かりやすい作風」である。むしろ、物語の結末の可能性を広げて一部の読者の期待を裏切るよりは、このような予定調和的な描写の方がいいのかもしれない。
絵柄は、キャラの造形や頭身のバランスは現代の絵にも近いが、瞳や点描の描き方が、どこか(本作品の時代よりもう一昔前の)90年代前半のりぼんの香りを感じさせる雰囲気。個人的には、こういう絵は結構好きだな。
テニス描写については数は少ないが、ラケットもフォームも丁寧に描かれている、という印象。正直、「テニス漫画」として読んでいると、ラストは「え? このタイミングで終わっちゃうの?」と思わされるのであるが、恋愛漫画としては、これはこれでアリなのだろう。