竹内元紀『Dr.リアンが診てあげる』

Dr.リアンが診てあげる (2) (角川コミックス・エース)

Dr.リアンが診てあげる (2) (角川コミックス・エース)

連載:『月刊少年エース』(2001〜2004年)
単行本:角川書店エースコミックス(2002〜2004年) 全5巻


 現在は『まんがライフMOMO』にて「チカちゃんは知りたがる」を連載中の竹内元紀出世作。当初は読切として『月刊少年エース』に掲載され、後に連載作品へと昇格した。単行本は実質的には全5巻だが、(実質的な)第3巻以降には巻数は明示されず、それぞれ「〜 純情派」「〜 THE MOVIE」「〜 …夏」というタイトルの単巻作品であるかのように表記されている。
 主人公は、「医者」を名乗る謎の少女・栄里安(さかえ・りあん)。彼女と、彼女の後頭部から生えている謎の生命体(通称「師匠」)が、高校二年の安城直人(あんじょう・なおと)の家に居候しながら、彼の同級生の岡崎美果や、徳川埋蔵金を守る忍者・刈谷もみじといった面々と共に、主に下ネタを中心とした激しいギャグの応酬を繰り返す、という物語。
 この作品のギャグの構造的特徴は、ボケとツッコミのポジションが融合している点である。正確に言えば、専業ボケはいるが、専業ツッコミがいない。主要キャラの大半が各自のスタイルでボケとツッコミを使い分けつつ、互いにサラッと流す形でのボケ返しも多いため、ネタの密度は濃い。
 本作品のエッセンスであるダジャレも、一つ一つの質よりも量(手数)で勝負する傾向はあるが、ここ一番で秀逸なネタを持ってくる辺りのセンスが抜群。全体的に、笑わせるというよりも、「上手いなぁ」と関心させるタイプのギャグ漫画だと思う。絵的にも、さほどエロくない程度のかわいい絵柄が、どうしようもなく下品な作風を程良く中和しており、バランスも良い。
 そして、第2巻収録の第18話は彼女達がテニスコートに行く話なのだが、岡崎以外はテニスのルール自体を知らないまま、ひたすら下品なギャグで紙面が埋め尽くされることになる。この回は岡崎がほぼツッコミ役なのだが、そんな中でもドサクサ紛れに彼女の側からもエロボケを挿入してくる辺りが、ある意味で本作品のスタイルを象徴していると言えるだろう。