上田キク『キラ☆キラ』

キラ☆キラ (角川コミックス ドラゴンJr. 131-1)

キラ☆キラ (角川コミックス ドラゴンJr. 131-1)

連載:『ドラゴンエイジPure』(2007〜2008年)
単行本:角川コミックス ドラゴンJr.(2008年) 全1巻


 OVERDRIVEが制作した同名のPC用アダルトゲーム(PS2版は全年齢向き)を、上田キクが『ドラゴンエイジPure』にてコミック化した作品(本作品は全年齢向き)。作者の他の代表作としては『懐路堂目録』『アラド戦記』『〆切様におゆるしを』など。ちなみに、原作のゲームを作成したOVERDRIVEの代表bambooは、「バカ・ゴー・ホーム」(『バカとテストと召還獣』の主題歌)などで有名なバンド「miktub」のリーダーでもある。
 主人公は、ミッション系の学校「欧美学園」に通う元テニス部員・前島鹿之助。部活を辞めて暇になっていた彼が、友人の村上にパンクバンドに誘われる場面から物語は始まる。その場は断った彼であったが、幼なじみの石動千絵に誘われて入部した第二文芸部において、部員の椎野きらりの歌声に聞き惚れたことを契機に、彼女達と共にバンドを結成することを決意する。
 ミッション系のお堅い雰囲気の学校で、千絵達がパンクロックの精神を学ぶために、日常生活から下品な罵詈雑言を並べ立てて生活するというギャップが、物語の前半における最大の見所。特にお嬢様である樫原紗理奈が無垢な心のまま下品な暴言を連発する場面は、ベタではあるが面白い。
 ちなみに、主人公はバンド内では女装しており、形式的にはガールズバンドの体裁をとっている。その意味では同時代の『けいおん!』との類似点が連想されそうだが、主人公が正体を隠している点や、上述のような下品な歌詞を強調するスタイルは、むしろ『DMC』に通じる作風と言えなくもない。
 なお、主人公が元テニス部という設定は、本作品の序盤で一言だけ語られるだけで、内容には一切関係ない(一応、ゲーム版では村上とはテニス部時代のパートナーらしいが、そのことも漫画版では触れられていない)。他にも、本当はもっと話を膨らませられそうな要素は色々と含まれているだけに、単行本1巻分だけで終わらせてしまうのは勿体ない題材だと思う。