柴田亜美『緊急出動(スクランブル)すずめちゃん!』

連載:『なかよし』(1993〜1994)
単行本:講談社KCデラックス(1994年)


 『南国少年パプワくん』などで有名な、90年代を代表する不条理ギャグ漫画家・柴田亜美が『なかよし』で描いた作品(作者にとっては少女誌での初連載作品)。ただし、読者層に配慮したためか、単行本は通常の「KCなかよし」ではなく、A5版の「KCデラックス」から発売されている。近年の作者の代表作としては『SCRAMBLE!』(月刊少年ガンガン)など。
 物語の舞台は、未来の国・ジパングの西の果てにある小さな村・ナガサキシティ。主人公は、村長の娘で、オランダ坂女子中学に通う13歳の御山野すずめ。黄金の産地として有名なこの村の利権を狙う、ネオ東京の「スーツマン軍団」が次々と送り込んでくる刺客を、126億円かけてボディチェンジした「スクランブルすずめ」が迎撃していく、という物語。
 さすがに低学年向け少女誌ということで、やや「毒」は抑えられているものの、基本的にはドラクエ四コマ以来の独特の作風が、いつも通りに展開されている。まともに女性キャラが描けないのもいつも通りで、途中で登場する、すずめの従姉の御山野ひばりなどは、いつものあーみんワールドにおける「ロンゲ・タレ目の美男子(ドクター高松など)」と顔が大差ない。
 そして、第6話ではそのひばりと、スーツマン軍団からの刺客・ルイジアナ緒方がテニスで対戦する場面があるのだが、実質的には一瞬で(実質的には対決の「つかみ」扱いで)終わってしまい、やや物足りない。また、コートのラインがおかしいとか、ラケットのデザインが明らかに古い(ネットとグリップの間の三角空間がない)などのツッコミ所もあるが、この人の絵にそんなディティールを求めることはそもそも間違いだよな、とも思う。
 ちなみに、スーツマン軍団のモデルはなかよし編集部の面々だそうで、単行本のカラー頁で「実写版」の彼等の写真も載っている。大手出版社でもこんな悪ふざけが出来るところが、この人の凄いところだよね、ホントに。