岩村俊哉『電撃ドクター モアイくん』

連載:『月刊少年ガンガン』(1992〜1996年)
単行本:エニックス・ガンガンコミックス(1993〜1996年) 全5巻


 『機動戦士Vガンダム』のコミカライズ版でも有名な岩村俊哉の代表作。初期の『月刊少年ガンガン』において4年間にわたって連載された。現在の作者は、ヒューマンアカデミー東京校マンガカレッジの非常勤講師でもある。
 電撃小学校5年生の茂相ヒロト(通称:モアイ)は、バカで身勝手で下品で変態なホモだが、医学に関してのみ優秀な知識を持ち、日本医師会会長の独断により、小学生にして医師免許を取得することになる(第1話)。そんな彼を中心とする多種多様な変人集団達のドタバタ劇を展開させつつ、当時の話題の作品・人物などのパロディ要素を取り入れたギャグ漫画作品である。
 そして第46話「炎のテニス対決ッス」では、モアイに恋する天然マイペースなお嬢様・天童夜叉子と、モアイの父が息子の補佐役として発明した医療看護ロボット・るりぃが、モアイを賭けてテニスで対決する話が描かれる。全てにおいて免許皆伝の腕を持つ夜叉子の繰り出す「ジェットキャノン」「超極限破壊球」といった必殺技と、アサルト・アーマーを装備したるりぃの人知を超えた戦いは、まさに超人テニス漫画の一つの極地と言えよう。
 全体的に、まだコロコロやボンボンの競合誌としての側面をも有していた時代のガンガンならではの、小学生ウケする下品なネタが多いので、おそらく生理的に受け入れられないという人も多いと思う。まずそもそも、「ホモ」を「バカ」と同等の人間的欠陥として描いている時点で、良識のある人なら、このような差別表現に対して拒絶反応を示してもおかしくはない。
 だが、初期パッパラ隊にも通じるリズミカルなギャグのテンポは絶妙で、モアイを取り巻くサブキャラも実に個性的で面白いし、『ロードス島戦記』のアシュラムなど、明らかに本来の読者層を無視したパロディ・センスも光る。あと、個人的に、この人の描く女の子は基本的にどれも好き。でもまぁ、その中でも一番可愛いと思うのは、ミチルと武井くんなんだけどね。