玉井たけし『ウルトラ怪獣かっとび!ランド』

連載:『月刊コロコロコミック』(1998-1993年、1995年)
単行本:小学館てんとう虫コミックス 全10巻(1990-1996年)


 『魔界ゾンベエ』などで有名な玉井たけしの最大のヒット作。ウルトラマンウルトラ怪獣の二頭身デフォルメキャラを題材とした作品で、後にウルトラマングレートを主人公とした続編も描かれた(単行本10巻に収録)。その後も作者はボンバーマン怪人ゾナーなどを題材とした多くの作品を同誌に掲載しつつ、学年誌の読者コーナーでも活躍していたが、2004年に急逝。
 物語の舞台は、ウルトラ戦士とウルトラ怪獣達が(なぜか)仲良く暮らすヨイトマカ星のウルトラ小学校。学級委員長のウルトラマンは真面目な優等生で、いつも真剣にクラスの皆の役に立とうと頑張るものの、後先考えぬ過激な「おせっかい行動」故に、いつも結果的にトラブルメーカーとなってしまう。そんな彼を中心とした、ハイテンションなドタバタコメディである。
 カネゴンレッドキング、バルタン星人など、個性溢れるウルトラ怪獣達の特徴を生かしたテンポの良いギャグが畳み掛けるように展開されており、中にはかなりマニアックな怪獣も登場する。その意味で、ウルトラシリーズが大好きだった小学生時代の私にはタマらない内容だったのだが、ウルトラ怪獣の基礎知識がない人々が楽しむには、少々厳しい内容かもしれない。
 そして第6巻収録の「ちょっと見学、中学校」にて、中学校のテニス部員としてピット星人とメシエ星雲人が登場し、後者がツインテールとテニスで対決する場面が(僅か数コマだが)描かれる。実際には全くテニスになっていない描写なのだが、この作品に対して、今更そんなツッコミはヤボだろう。
 ちなみに、ピット星人とメシエ星雲人は(デザイン的に彼等であることは明白だが)本編では名前すら名乗っていない。作中では他にも名前も呼ばれぬモブキャラとして様々なデフォルメ怪獣達が登場しており、それらのデザイン一つ一つに作者の原典への深い愛が感じ取れる。そんな作者の愛に溢れた遊び心をニヤニヤしながら読める人にこそ勧めたい、そんな作品である。