高梨みつば『紅色HERO』

紅色HERO 1 (マーガレットコミックス)

紅色HERO 1 (マーガレットコミックス)

連載:『別冊マーガレット』(2003〜2011年)
単行本:集英社マーガレットコミックス 全20巻(2003〜2011年)


 『悪魔で候』などで有名な高梨みつばの代表作であるバレー漫画。『別冊マーガレット』で長期連載され、浅川悠主演でCDドラマ版も発売された。
 主人公は、高校一年生の住吉のばら。老舗料亭の跡取り娘であるものの、女らしさとは無縁で、中学時代をバレー一筋に生きてきた彼女であったが、入学した紅野高校の女子バレー部が廃部になっていると知らされ、部活再建に向けて動き出す。その過程で、母親との確執から実家を飛び出した彼女は、男子バレー部の特待生用の寮に、寮母代理として住み込むことになる。
 物語は、のばらが女子バレー部の再建&春高出場を目指すという、マーガレット伝統の正統派スポ根漫画としての要素と、彼女と特待生寮に住む男子バレー部員との恋物語としての要素という二つの側面から成り立っている。
 そして前者の過程で仲間となる部員の一人として、テニス経験者の小溝玲奈という少女が登場する。当初は、「のばらに憧れる、ウザい性格のお荷物部員」にすぎなかった彼女が、小柄ながらも必死の特訓でレシーバー&サーバーとしてチームに貢献出来る存在へと成長していく過程は、まさに伝統的な王道スポ根である。また、敵側も含めて、人と人との「絆」に焦点をあてたエピソードが多く、ベタではあるが熱い青春群像が展開されている。
 一方、後者に関しては、比較的早い段階で「相手役」が確定してしまうため、正直言って、今一つ盛り上がりに欠ける。というか、そこから先の「選ばれなかった方」が色々な意味で不憫すぎて、中盤以降の展開はあまりに哀しい。せめて、もう少し早い段階で踏ん切りをつけさせてあげても良かったんじゃないかな、と思う。最終的な結末も、ほぼ分かっていた訳だしね。
 全体的に予定調和的な構成ではあるが、下手に奇を衒うよりも、堂々と王道のスポーツ青春群像を描いた姿勢は、高く評価したい。途中の鬱展開は少々クドかったようにも思えたが、最後はスパッと綺麗に終わらせたしね。