英国式庭球城決戦

 ということで、上映開始からもう半月以上経ったので、もうそろそろ、『テニスの王子様』の劇場版のネタバレ感想を書かせてもらいます。
 一応、「既に映画を見た人」を前提として書きますので(その意味では、以前の『そふてにっ』のアニメ版の時と同様、「レビュー」ではなく、あくまで「感想/雑感」です)、その点に御注意頂いた上で、もし良かったら、適当に読み流して頂けると幸いです。


1、全体のストーリーに関して
 物語自体は、非常に王道でしたね。公的な場でプレイする場を奪われた若者達が、テニス界への復習を目指すものの、その中から裏切り者が出てきて、最終的には主人公達との試合を通じて、まっとうなテニスの道へと戻る決意を固める。まさに、ブラックシャドウズ的な展開ですよね。
 特にラストの、各国選手団が連名で、クラックの大会参加の許可を申し出るというくだりは、それが実現可能かどうかは別として(そもそも、この大会のコンセプト自体に現実味がない訳ですが)、個人的には一番好きなエピソードです。やっぱり、この世界のテニス選手は、皆、思考回路は同じなんですね。
 しいて難点を上げるとしたら、シウの造反の理由付けがちょっと弱いかなぁ、と。あんなコトやってたら、相手がそうなることくらい、最初から想像がついてるものなのでは? と思えてしまうのですよね。まぁ、あくまで彼等は(忘れられやすいですが)「中学生」ですから。他人の痛みを理解するには、やはり実際に目の当たりにしないと難しいのかもしれません(ということにしておこう)。


2、主要キャラについて
 今回は、大会に招待されたのは青学・立海四天宝寺氷帝だったようですが……、なぜ、ベスト4の名古屋星徳が呼ばれない? 皆、それぞれの母国の代表で出てるのかな? 蔵兎座君は、未だに国籍がどっちなのかよく分からない訳ですけど。
 で、そこになぜか比嘉が乱入する訳ですが、東京で別れた面々とイギリスで遭遇した時に「お前ら、沖縄に帰ったんじゃなかったのか?」 という言い方は、明らかにおかしいですよね(普通に考えたら、一度沖縄に帰ってから、何らかの理由でイギリスまで来た、と解釈する筈)。てか、この大会って、いつの時点の話なんでしょう? タカさんや銀さんが普通にプレイしてたから、少なくとも全国大会から一ヶ月以上は経過してると思うんですが。
 ちなみに、豪華版のパンフレットだと、付属のイラストカードが「リョーマ」+「各校部長」+「ゲスト2人」だったのですが、立海枠は真田と赤也が使ってしまったために、本編では幸村には殆ど出番無し。まぁ、さすがに幸村にダブルスさせる訳にはいかなかった、という事情もあるんでしょうね(多分、組めるとしたら柳くらいだと思う)。


3、ゲストキャラについて
 本編では語られませんでしたけど、シウって(名前と設定から察するに)中国系ですよね、多分。それで気功術を操り、それを皆に伝授した、ということなのだと思うのですが、どこかで、東洋系っぽさを臭わせる描写があると、なお良かったな、と思います。それにしても、気功を使ったらアウト(?)とは、イギリスのルールはなかなか厳しいですね。
 あとは、主要三人以外のクラックの面々に名前すら無かったのが、ちょっと勿体ない気もした訳ですが、時間も限られてるし、仕方ないですね(声も兼役だったみたいだし)。まぁ、彼等の試合はあくまで「コートの特殊性」の方が強調されてるので、プレイヤー自身にはそれほどキャラ付けも必要ない、と判断されたのでしょう(ニンジャマンは除く)。
 キャスティングに関しては、自由はさすがに完璧でしたね。大東君も、思ったより良かったです。早乙女君は……、さすがにちょっと無理があったかな(苦笑)。実は淡々と喋る役の方が、棒読みにならないように演じるのが難しいんですよね。まぁ、もともとテニプリの声優陣は、あさりどとか、グレチキとか、あばれヌンチャクとか、声優畑ではない人達も多い訳ですから、今更芸能人起用に目くじらを立てるつもりはありません。イメージ的にも、悪くはなかったんじゃないかな、と思います。


4、テニス描写に関して
 正直、今更「気功術」程度では大して驚かないよなぁ、と思っていた訳ですが、そこから重力操作にまで発展させたのは、なかなか面白かったですね。てか、シウは中国代表として、原作の方にも出てきてくれないかな。個人的には、前作の最後の水中決戦よりも楽しめました。
 しかし、それ以上に面白かったのが、その他の面々が闘った特殊コートでの試合の数々。私はテニプリには、こういうプロゴルファー猿的な展開をずっと期待していたので、非常に楽しめました。ただ、不二&木手のコートは、どうやったら勝敗がつくのかが分からないですよね。跡部vsニンジャマンに至っては、最初から「相手を倒すこと」が勝利条件だと明言されてるので、それはそれで清々しかったですが。
 あと、「リアルテニス」というルールについては、恥ずかしながら私は知らなかったのですが、そんな教養ひけらかし的な設定も、暴力テニスのための材料としてしか使われない辺りが素敵です。管見の限りにおいて、数ある格闘テニス漫画の系譜においても、このボールを使った作品は見たことがないので、久しぶりにアニプリスタッフを、ちょっと見直しました(基本的に私は原作派なので、アニプリには辛口なことが多い)。


5、客層について
 池袋のTIJに参加した時は、殆どが女性客だったので、「やっぱり、テニプリの男性ファンって、極少数なのかな」と思っていたのですが、実際に劇場に足を運んでみると、意外に小中学生の男の子の集団も多かったりして、ちょっと安心しました。やっぱり、我々の世代がキャプテン翼を見ていた時の感覚で、素直に少年漫画として楽しんでいる子達も多いんですね。 
 他にも、私と同世代(アラサー)くらいの男性や、初老のおっちゃんが一人で見にきている姿もチラホラあって、思ったほど居心地は悪くなかったです。ただ、それでもチケット売り場で「テニスの王子様、お願いします」と言う時の気恥ずかしさだけは、今でも抜けない訳ですが。


 ということで、久しぶりにダラダラと長文を書いてしまいました。もし、まだ見てない人がいたら、公開が終わる前に、ぜひ見に行って下さい。前作のような恐竜は出てこないので、ネタ映画として見るには、ちょっと地味かもしれませんが、普通にジャンプ王道のアニメ映画として楽しめると思います。