藤村真理『サラダ日和』

連載:『別冊マーガレット』(1987〜1988年)
単行本:集英社マーガレットコミックス(1988年) 全2巻


 『隣のタカシちゃん。』などで有名な藤村真理が『別冊マーガレット』で描いた初期の連載作品。2巻の巻末には「エモーション」も同時収録されている。近年の作者は同誌において『少女少年学級団』を連載中。
 主人公は、T女短大一年生の藤井真子(しんこ)。他大学と合同のテニスサークルに参加している彼女は、同じサークルの男子メンバー・椎名のことが気になりつつも、高校時代に付き合っていた直人にフラれた時のトラウマから、一歩踏み出せない状態にあった。そんな中、真子は意外な形で直人と再会したことで、思わぬ方向へと彼女の恋模様が広がることになる。
 なお、彼女達が所属しているのは、あくまで「サークル」なので、さほど本格的にテニスに打ち込んでいる訳ではないのだが、真子も椎名もそれなりの実力者ではあるらしい。本編においてまともにそれが描写される場面はごく僅かではあるが、その数少ない場面で、少女漫画における「男女の出会いのための舞台装置」としてのテニサーの光景はきっちりと描かれている。
 基本的には、真子・椎名・直人の三人を基軸とした恋愛劇であり、真子のモノローグを中心としつつ、少しずつ彼女達の心の変化を描いていくことになる。登場人物の一人一人が、「恋人」を作っては違和感を感じて、そしてまた新たな恋を求めるという、実に「大学生らしい恋物語」を展開している。作者自身がこの当時はまだ大学生だったこともあり、作品全体から醸し出される空気は、よくも悪くもリアルで、それであるが故に、どこか辛い。
 このような、リアルで等身大な少女達の恋愛の苦さ、ズルさ、そして淡さを痛切に表現する作風は、紡木たくを筆頭とするこの時代の別マのお家芸であり、現在の作風が確立する前の作者の意外な一面が楽しめる作品と言える。とはいえ、私のような少女漫画趣味のおっさんはこの時代の絵柄が大好きなのだけど、若い人達には古風すぎて受け入れられないかもしれないな。