円城寺マキ『ヨルカフェ。』

ヨルカフェ。 1 (フラワーコミックス)

ヨルカフェ。 1 (フラワーコミックス)

連載:『プチコミック』(2007〜2008年)
単行本:小学館プチフラワーコミックス(2008年)


 『プライベート・プリンス』や『世界はボクらのために!』などで有名な円城寺マキが『プチコミック』にて描いた作品。単行本は全3巻。本編完結後の2009年に、後日談的な内容のドラマCDも発売された。現在の作者は同誌にて『はぴまり〜Happy Marriage!?〜』を連載中。
 主人公は、23歳の未亡人・高遠妃菜(ひな)。彼女の亡夫は、親子ほど歳の離れた資産家・高遠邦和であり、彼女は邦和の遺言によって、彼が所有していた夜間限定開店の喫茶店QUEEN'S CAFE」のオーナーに就任し、その店の従業員である沢渡颯士(そうし)、雪村美澄(よしずみ)、南條望という三人のイケメン・ギャルソンと共に店の経営に携わることになる。
 カフェの関係者は皆、邦和に恩義を受けた「家族を持たない者達」であり、そんな彼等が共に生活していく過程で、人間関係が少しずつ変化していく過程を描いた作品である。スタート時点では、上記のギャルソン三人と、邦和の顧問弁護士の藤堂久貴に囲まれた主人公の逆ハーレム物語としてスタートするが、最終的には綺麗に決着をつけることになるので、その意味では「厳密には逆ハーレム漫画ではない」と作者自身は位置づけている。
 ちなみに、カフェが夜限定なのは、男性陣が昼間はそれぞれ別の仕事をしているからであり、その点も含めた彼等の詳細な設定は本編を通じて少しずつ明かされていくのであるが、颯士だけは第一話の時点で、元プロテニス選手であると明言されている。おそらくこの設定は作者自身のテニス好きが反映されており、本編における(僅かな)テニスの描写も愛が感じられる。
 個人的には絵柄は好みだし、泥沼になりすぎない程良い恋愛劇にも好感が持てるのだが、それだけに、全3巻という尺ではやや物足りなく感じてしまう。もう少しゆっくり展開させても良かったと思うのだが、でもまぁ、大人の男女がこれだけ近くで生活してたら、これくらい早い方が妥当なのかな。