大島司『STAY GOLD』
- 作者: 大島司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/17
- メディア: コミック
- クリック: 60回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
単行本:講談社マガジンコミックス(2004年) 全3巻
1993年にアニメ化、1994年に実写映画化されたサッカー漫画『シュート』の作者・大島司が、総計66巻に及ぶ同シリーズの長期連載の後に描いたテニス漫画。ちなみに、同じマガジン系のテニス漫画である『W's』の作者・瀬尾公治は彼女の弟子である。
中学サッカー界で「赤い弾丸」と呼ばれた主人公・佳山大介が、高校進学後にサッカー部の誘いを断わり、弱小と言われる男子テニス部に入部するところから物語は始まる。彼がテニス部を選んだ理由(=彼の過去)は第1巻の最後で明かされ、やがてその彼の「過去」に関わる人物達が次々とライバルとして登場するのだが、残念ながらその大半はろくに見せ場もないまま、僅か三巻で打ち切られてしまう。
不人気の原因の一つは、主人公の性格の中途半端さであろう。もう少し極端な熱血漢にするか、逆にもっと飄々とした性格にした方が、読者としても感情移入しやすかったのではないだろうか。同様に、ヒロインの“アイスドール”増村美冬もまた、他の漫画の同じ異名を持つ面々(ジュディ寺尾、片桐薫、etc.)と比べて、今一つ「冷たさ」が足りないというか、可愛く描かれ過ぎており、「名前負け」感が否めない。他のテニス部員達も今一つキャラ立てが不十分なまま物語が進んでしまっており、作品内における彼等の立ち位置すら不明確である。
しかし、テニス練習における「振り回し30秒」の理論はなかなか秀逸であるし、最終盤で描かれる対岡野戦は、実現可能な範囲でのテニスの試合描写としては間違い無く一級品である。また、本編とは殆ど関係ないが、第1巻134頁の佳山の台詞は、テニス漫画史に残る名台詞と言っても良いと私は思う。
結果として本作品は、同じく三巻で打ち切られた『はるかなビシ』『翔の伝説』と共に「サッカー漫画の後にテニス漫画を描くと失敗する」というジンクスの形成に一役買ってしまった訳だが(一応、まだ『見上げてごらん』はなんとか踏み止まってはいるが)、上述の通り、部分的にはそれなりに面白い場面も多いので、漫画喫茶などで見かけたら気楽に手にとって読んでみるのも良いと思う。