桑原真也『0(ラヴ)リー打越くん!!』

0リー打越くん!! 1 (アッパーズKC)

0リー打越くん!! 1 (アッパーズKC)

連載:『ヤングマガジンアッパーズ』(年)
単行本:講談社アッパーズKC(1999〜2001年) 全6巻


 今は亡き『ヤングマガジンアッパーズ』にて連載された異色のテニス漫画。作者はこの後、同誌にて『TO-mA』を発表した後、現在は佐木飛朗斗原作の『R-16』を(アッパーズの廃刊後はヤンマガ本誌にて)連載中。
 物語は、テニス部でパシリをさせられている高校生・打越(うちこし)の前に、半裸の吸血鬼の少女・真希シノヴが現れるところから始まる。打越の目の前で彼の上級生達の生首を掲げ、打越の服を破いて彼の血を吸い、「お前は私のモノだ」と言い放って、テニス部に入部する。このような意味不明な第一話から始まる本作品は、以後もエロ・グロ・テニスの三要素を織り交ぜた暴走を続けていく。
 エロとグロを織り交ぜた作品は多い。エロとテニスも頻繁に融合する。グロとテニスを両立させた漫画も一応存在する(『呪われたテニスクラブ』など)。しかし、この三要素を全て満たした作品は、おそらく他に無いのではなかろうか? その意味で、まさしく本作品はテニス漫画史上唯一無比の強烈な個性を放つ存在と言える。
 真希はただひたすらに打越の血と身体を求め、彼の周囲に現れる女性を全て敵とみなし、彼に害なす者(および偶然その近くにいた者)を何の躊躇もなく殺戮する。また、彼女に血を吸われた者は我を忘れて欲情し、その大半が破滅の道を辿っていく。そして最終的には真希の暴走を止めるため、全人類の存亡を賭けたテニス勝負が繰り広げられることになるのだが、正直言ってこの展開はまともな神経では読めない。
 また、よく本作品は「別にテニスで無くても良かったのでは?」と言われるが、それは誤解である。確かに全編通じてテニスの場面は少ないが、「感情のコントロール」という本作品の重要なテーマを表現するためには、打越はテニス選手でなければならなかったのである(詳細はネタバレになるので割愛)。
 とはいえ、はっきり言って「テニス漫画」として普通にお勧め出来る作品ではないこともまた事実である。それでも、テニス漫画史における究極のイロモノであるということを踏まえた上で、エログロにある程度免疫のある人であれば、それなりに楽しめる作品であるとは思う。