草場道輝『見上げてごらん』

見上げてごらん 1 (少年サンデーコミックス)

見上げてごらん 1 (少年サンデーコミックス)

連載:『週刊少年サンデー』(2005〜2006年)
単行本:小学館サンデーコミックス(2005〜2007年) 全8巻


 サンデーの人気サッカー漫画『ファンタジスタ』の作者・草場道輝が、同作品終了後に同誌で連載したテニス漫画。作者の連載作品としては他に、マリンスポーツ漫画『南十字星(サザンクロス)』(『週刊サンデー超増刊』連載)がある。
 剣道場の跡取り息子である主人公・湯沢了(ゆざわ・りょう)が、剣道部の推薦で入学した筈の聖陵高校で、成り行きでテニス部の入部試験を受けることになるところから物語は始まる。聖陵のテニス部は全国屈指の名門であり、部内では学年に関係なく完全実力制が導入されており、各自のジャージの胸に貼られた「銀杏の葉」の数がその者の実力を示している。最強の証である「五つ葉」の地位を目指して部内のライバル達との「入れ替え戦」に挑みつつ、チームとしての全国制覇、そして更にその上の目標を目指して戦い続ける高校生達の姿が描かれる。
 作者自身、連載前にテニススクールに通って勉強しただけのことはあって、了がテニスを基礎から学んでいく姿には説得力があり、それぞれの試合描写にも緊迫感が漂う。また、画力に関しては歴代のテニス漫画と比べてもかなり高く、スポーツ漫画家としての作者の確かな実力が伺える。
 ただ、残念ながら物語全体の構成としては、『LOVe』と『フィフティーン・ラブ』を両方やろうとして結果的に中途半端に終わってしまった、という印象である。特に、六巻の最後の急展開にはそれまでのファン層の大半がついて来れなかったようで(個人的には、勝敗とその後の配置を逆にした方が盛り上がったのではないかと思う)、最後は露骨に打ち切りと分かる無理矢理な詰め込みで終幕を迎えることになってしまった。一部の主要キャラ達はまともに試合すら描かれないまま終わってしまっており、そんな作者の無念は単行本のあとがき等からも伺える。
 とはいえ、他の「サッカー漫画の後に描いたテニス漫画」の惨状に比べれば、全8巻というのは十分に善戦した結果と言えよう(サンデーのテニス漫画としても『LOVe』に次ぐ長期連載である)。後世の人がどのように評価するかは分からないが、少なくとも私にとっては、リアルタイム十分に楽しめた名作であった。