山田謙二『アクトレス』

連載:『月刊少年ジャンプ』(1990-1992年)
単行本:集英社ジャンプコミックス(1990-1992年) 全5巻


 1990年代初頭の『月刊少年ジャンプ』で連載されていた作品。作者の山田謙二は本作品以外にも同誌上で幾つかの作品を掲載していたが、単行本化したのは本作品のみで、現在の消息も不明。
 主人公は、中学二年生の夏目広幸。夏休みのキャンプにおいて、思わせぶりな表情で海岸にたたずむミステリアスな少女・滝川ゆうこと出会うところから、物語は始まる。滝川は当初、自分のことを「17才」と言っていたが、なぜか二学期の初めに夏目のクラスへと転入してくる。この二人に、夏目の幼馴染みで生徒会役員の藍川ちさとと、テニス部の伊達男・東條豊を加えた四人のラブストーリーが展開されることになる。
 ヒロインの風貌や性格は明らかに『きまぐれオレンジロード』からの影響が強く(ちなみに、同作品のアニメ版の主題歌は「鏡の中のアクトレス」)、絵柄やコマ割のセンスは(本人も認めている通り)あだち充高橋留美子を足して二で割ったような作風である。つまりは、良くも悪くも80年代の三大ラブコメ作家の「いいとこ取り」な作品と言えよう。
 そして、東條の「テニス部」という設定にしても、おそらくは『めぞん一刻』の三鷹の影響であろう。本編では滝川も交えてテニスに興じる場面が何度か登場するが、作中での位置付けという意味でも『めぞん』と同様、「『色男』としての東條を彩る小道具」以上の価値は無い。
 ただ、本作品がそれらの先行作品の「劣化コピー」で終わっているのかというと、決してそうではない。初登場時から深い「影」を背負って登場した滝川は、最後の最後までその心の奥底を完全には開かぬまま(夏目の存在に心を揺らしながらも)己の意志を貫き続けた結果、最後は衝撃的な「誰も幸せになれない終幕」を迎えることになる。ハッピーエンドが常識である少年誌の恋愛漫画において、この結末はあまりに重い。
 滝川自身の心理描写が最後まで断片的にしか描かれなかったため、彼女の(そして作者の?)意図がよく分からないまま終わってしまった感は否めないが、逆にそのような展開だからこそ、彼女の印象が深く心に残るのもまた事実。好き嫌いは別れると思うが、だからこそ私は一読をお勧めしたい、そんな作品である。