うすた京介「忍者部隊ゲンバリング・ボイ」(『チクサクコール』収録)

うすた京介短編集 チクサクコール

うすた京介短編集 チクサクコール

初出:『週刊少年ジャンプ』(1998年)
単行本:集英社ジャンプコミックスチクサクコール』(2001年)


 『すごいよ!!マサルさん』や『ピューと吹く!ジャガー』で有名なギャグマンガ界の革命児・うすた京介が、『武士沢レシーブ』の直前に『週刊少年ジャンプ』で描いた短編作品。単行本としては『チクサクコール』に収録(同時収録は他に「ザ★手ぬき君対物酢御君パァト1」「ザ★警察」「ザ★はげしいはんこう」「もうちょっと右だったらストライク!!」「それゆけ!未確認飛行物体男」「やれいけ未確認飛行物体男性」「男一匹セニョリータ」「ビィフィータ」「エト」)。
 主人公は、坊主頭で強面の高校一年生・江戸川頑馬(がんま)。生来の暴れん坊であった彼が、テニス部の西山はるか(先輩)に憧れて、彼女の通う学校へと転校してくるところから物語は始まる。はるかが暴力を嫌う女性であることから、頑馬は「さわやか好青年」を装おうとするが、その本性を隠しきれず、周囲の者達からは怯えられ続ける。そんな中で、同じクラスの「忍者を愛する会(略称:忍会)」の高村千鳥瀬(ちとせ)に気に入られた彼は、「練習場がテニス部の隣」という理由から、同会に入会することになる。
 タイトルの「ゲンバリング・ボイ」は、おそらく「バンゲリング・ベイ」のパロディだと思うが、なぜこの呼称を用いたのかは不明(多分、深い意味はない)。このようなセンスからも明らかなように、基本的にこの人は読み手を選ぶタイプの作家なのだが、本作品に関しては、忍者絡みのシュールな演出で盛り上げながらも、本筋自体は比較的綺麗にまとめた内容であり、うすた作品にしては珍しい「読みやすい漫画」の部類だと思う(同時収録作品の大半がぶっ飛びすぎなので、余計にその印象が強い)。
 テニス描写に関しては、その大半が「手抜き絵」なのだが、この人の場合はその「手抜き絵」もまた演出の一環として評価すべき作風なので、他の作品と同じ尺度では計りにくい。とはいえ、テニス目当てで読むべき作品ではないことは明らかである。
 ちなみに、最後のオチに関して、単行本の直前に書かれた作者コメントで「裏の真実」を説明していたが、正直、「ここは素直に、台詞通りの展開でも良かったのでは?」という気もする。まぁ、どっちでも話の流れとしてはアリだと思うんだけどね。