樹原ちさと『恋は100kg』

恋は100kg (りぼんマスコットコミックス)

恋は100kg (りぼんマスコットコミックス)

初出:『りぼん』(1992年)
単行本:りぼんマスコットコミックス(1994年) 全1巻


 80年代後半から90年代初頭にかけて『りぼん』で活躍した樹原ちさとが、1992年の同誌の秋の増刊号にて描いた短編作品。その後、同時期の増刊号に掲載された「恋のメリヤス編み」「新ウサギとカメの物語」「思いこみパラダイス」と共に一冊の単行本にまとめられた。近年の作者は、あおば出版の『ハムスター倶楽部』にて「ハナとマル」などを発表したが、その後の活動は不明。
 主人公は、白ばら女子高等学校の二年生の小岩井広美(♀)。身長167cmで、かつては100kg超の巨体であった彼女が、五年間のダイエットを経て、体重を53kgまで減らすことに成功したところから、物語は始まる。ダイエット成功を機に、彼女は憧れの松丘修二コーチが所属するテニス部への入部を決意するも、双子の兄で今も100kg以上の体型の持ち主である一美(相撲部)の存在によって、思わぬ方向へと彼女の運命は展開していくことになる。
 テニス部を舞台としているものの、残念ながら練習風景が描かれるのみで試合の場面は一度もないので、その意味では「テニス部恋愛漫画」と呼ぶのが適切であろう。そのテニス部の描写自体も決して濃密とは言えないが、そのような印象を受ける背景には、作者の「脱力的な画風」が与える影響も大きいと思うので(そして、それがまた作者の魅力の一つでもあるので)、そのことは特に作品としての欠点と考えるべきでもないだろう。
 物語展開自体は、正直、途中でオチが読める展開ではあるのだが、それはそれで「分かっていても、読んでて楽しめる物語」であり、全体的にほのぼのした雰囲気で個人的には好感が持てる。ちなみに、本作品および同単行本収録作品には全て、最後に一つの「教訓」を提示して終わる、という形式となっており、その意味で、(特に他に明確な共通点がある訳ではないが)一つの連作シリーズとして読むことも出来よう。