悠妃りゅう『こい・すた』

こい・すた (フラワーコミックス)

こい・すた (フラワーコミックス)

連載:『少女コミック』(2007年)
単行本:小学館フラワーコミックス(2008年) 全1巻


 『少女コミック』で短編作品を中心に活躍してきた悠姫(ゆうひ)りゅうが描いた連載作品。単行本としては、作者にとって本作品が六冊目の作品となる。現在の作者は同誌にて「花嫁様は16歳」を連載中(当初は五回連載で終了予定であったが、好評につき連載継続決定)。
 主人公は、高校一年生の幸田雫。占いに左右されやすい性格の彼女が、「テニスコートで10年に1度の出会いが起こる」という占いを信じて学校のテニスコートに向かい、そこで同じクラスのテニス部のエース・羽鳥空(はとり・そら)と遭遇するところから物語は始まる。羽鳥の傲慢な態度に当初は反感を覚えつつも、徐々にその優しさに触れていくうちに彼への恋心が芽生えていく雫の心情描写を中心にストーリーは展開していく。
 羽鳥は過去の経験から恋愛に対してトラウマを持っており、それ故に当初は雫とは距離を置こうとするのだが、その彼の心情の変化もまた本作品において重要な位置を占めている。そして、そんな空の過去を知るもう一人の重要人物として、同じテニス部の護国寺広貴(ごこくじ・こうき)という男性が登場するのだが、残念ながら物語の尺の都合上、物語の後半において彼の出番が削られてしまったため(作者談)、今一つ中途半端なキャラのまま終わってしまっている点が残念なところである。
 とはいえ、雫と空の関係については、単行本一冊の恋愛物語としては綺麗にまとまっているとは思う。ただ、正直、物語終盤のアレは蛇足ではないかなぁ、とも思うのだが、やはり今の少コミはコレを描かない訳にはいかないのかな(別にそれはそれで悪くはないんだけど)。
 テニス漫画としては、羽鳥の練習と試合の風景が若干描かれる程度であり、作者がテニス経験者である割には描写がやや物足りない感はあるが、本作品の主眼があくまでも恋愛に置かれている以上、やむを得ないことであろう。
 個人的には、雫のような一直線な性格のキャラは感情移入がしやすいので、その意味では「読みやすい漫画」の部類だと思う。最近の少女漫画にこの手のタイプの主人公が多い気がするのは、それだけ女性の恋愛行動もストレートになりつつある、ということなのだろうか。