高須加ちさ「さげgirlの赤い糸」
初出:『ザ・マーガレット』(2009年)
単行本:未発売
近年の『ザ・マーガレット』で何本かの読切作品を掲載している高須加ちさが、同誌の2009年2月号にセンターカラー(表紙+1頁)で掲載した作品。なお、正確なタイトル表記は「『ダウン』を意味する曲線矢印」の上に「さげ」のフリガながつけられている。ちなみに、作者は大阪総合デザイン専門学校の出身らしい。
主人公は、女子高生の佐多亜衣。小学生の頃から「関わった男性が不幸になる」というジンクスに苦しんでいた彼女が、男子テニス部のエースである伊勢崎先輩に「付き合ってよ」と言い寄られる場面から物語は始まる。本音では伊勢崎に惹かれつつも、彼を不幸にして嫌われることが怖いが故に彼を避けようとする佐多であるが、それでも伊勢崎は諦めず、彼女を口説き続けていく様子が描かれる。
話のコンセプト自体は面白いし、佐多も伊勢崎もそれぞれに感情移入しやすいキャラなので、漫画としては非常に読みやすいし、好感も持てる。物語のテンポも悪くないし、最後の結末もそれなりに綺麗にまとめたと言って良かろう。
絵に関しては、冒頭のカラー頁は上手いと思うし、物語の要所における表情の描写なども非常に丁寧なのだが、一方で明らかに(「デフォルメ」ではなく)手抜きと思われる箇所が多いように思えてしまうのが残念。
特にテニスの場面に関しては、伊勢崎のラケットを持つ手がコマによって違っていたり(漫画である以上、そういう設定として描くのならそれもアリなのだが……)、スコアボードにポイント数とセット数が併記されてるのにゲーム数が書かれていないなど、明らかに不自然と思われる描写も多く、そもそもフォームの描き方自体も上手いとは言えない。作者自身も欄外で「テニス好きの皆様に誤りながら新年をむかえます」と書かれていたので、あまり綿密に取材する時間もないまま、無理して描いていたのかもしれない。
そんな訳で、全体的には、発展途上の新人漫画家の作品ということで粗さが目立つが、話自体は悪くないし、モノローグの使い方なども上手いので、今後に期待したくなる要素が垣間見れる作品でもある。でもまぁ、スポーツ漫画には向かない人かな。