山花典之『夢で逢えたら』

夢で逢えたら 9 置手紙 (ヤングジャンプコミックス)

夢で逢えたら 9 置手紙 (ヤングジャンプコミックス)

連載:『ビジネスジャンプ』(1994〜2000年)
単行本:集英社ヤングジャンプコミックス (1994〜2000年) 全17巻


 『妹〜あかね〜』『オレンジ屋根の小さな家』で有名な山花典之(連載開始当時のPNは「HANAKO」)がビジネスジャンプにて描いた代表作。97年にCDドラマ化、98年にOVA化、99年にTVアニメ化を果たした。現在の作者は携帯コミックにて「愛しのマリー☆LOVE DRUG DOLL」を連載中。
 主人公は、株式会社・海山に勤める24歳の営業マン・フグ野マスオ。「彼女いない暦=年齢」の彼が、一念発起して足を運んだお見合いパブにて、友人の誘いで無理矢理入店させられていた幼稚園教員・潮崎渚と出会うところから物語は始まり、以後は、デート経験すらないマスオと、男嫌いの渚が、周囲の様々な男女を巻き込みつつ、不器用ながらも少しずつ距離を縮めていく恋愛劇が描かれる。
 何の取り柄も無い主人公と、絶世の美貌を持ちながらも身持ちが固く嫉妬深いヒロインという、良くも悪くもベタで王道な青年誌ラブコメである。渚を初めとする女性陣はいずれも性格に難のあるタイプが多く、それ故に一人一人が独自の個性的な魅力に溢れている(個人的には、マスオの同僚で渚の友人でもある「ゆすり・たかりの磯辺さん」がお気に入り)。
 そして、この手の青年誌作品のヒロインがテニス教室に通うのは音無響子さん以来の伝統であり、渚もその点は見事に踏襲している。また、彼女は大学生の頃からテニスサークルに参加しているのだが、そこで出会った先輩が本編における主人公の最大の恋敵として登場する展開が組み込まれており、その意味でも物語中でのテニスの役回りは決して軽いとは言えない。なお、同じテニス教室には、渚の働く幼稚園の園長先生も通っているのだが、第6巻にて描かれる彼女の主役話は本編屈指の名エピソードである。
 絵柄の変遷の激しく、初期の頃と最終巻ではどのキャラも別人のように変貌しているが、長期連載ではよくある話。私は初期の頃の絵の方が好きだけど、この辺は意見が分かれるだろうな。